電撃戦とマンシュタインの誤算とダンケルクの悲劇
「電撃戦という新しい戦術思想を身に着けた独軍は、ついに1939年にポーランドへの侵攻を開始するわ。ポーランドにしたところで機関銃や戦車相手に剥き身の騎兵を突撃させるような真似をしていたから、あっという間に負けてしまったわ。ヒトラーと密約したソ連からも同時侵攻を受けたからたまらないわ。ここで注目すべきはドイツの戦略・戦術思想ね。大戦略的に言えば、ソ連と密約を踏んで、戦力的に圧倒的優位に立つことでまず絶対負けないというポジショニングを行ったわ。けれども、それだけでは十分ではない。ポーランドへの侵攻と同時に英仏の参戦は必至だったわ。いくら英仏の動員が遅いといっても、ポーランドにかかずりあっている間に後ろを付かれては溜まらない。そこで従来は【宣戦布告>動員>侵攻開始】という順番を【動員>侵攻開始>宣戦布告(実際は軍事行動の正当化の布告)】という順番にした上に、ソ連までが参戦したから溜まらないわ。しかも、ドイツ側は航空機を大砲代わりに使うことによって、重砲の支援無しに一気に軍を侵攻させるという電撃戦の走りをこの戦争ではじめている」
「え~と・・・・」
「いいから。おとなしく聞いていなさい。そのうち収まるから」
「ポーランド+ソ連+フランス+イギリスという仮想敵国は、合計すれば当然ドイツ単独の戦力を大幅に上回るものよ。これをまず、ポーランドの半分という条件でソ連を一時的に味方につけ、動員をすばやく行うことによってフランスやイギリスが手を出す前にまずポーランドを片付けたわけね。すなわち、勝って当たり前のポジショニングを行うことに全力をかけたわけよ。ナポレオンもいっているわね。総兵力数ではなく、ひとつの戦場に敵よりも多い兵力・火力を集中することこそ全てだ、と。戦略って言うのは外交・諜報・機動力の整備によってこれを実現するすべに他ならないわ」
「・・・・は、はい」
「これをスピードによって実現した例としては、織田信長の第一回上洛による六角氏攻略、第一回朝倉越前侵攻、羽柴秀吉による中国大返し等があるわ。いずれも相手の予想しないスピードもしくは時期に兵力を動員し、物理的もしくは精神的優位にたった上で戦闘に及んでいるわ。つまり、ポーランド戦の場合【センター・ピン】【8割2割の2割】【ティッピング・ポイント】は兵力の迅速な動員と機動、それを可能とする戦車と戦闘機の共同攻撃による陸空立体作戦ということになるわね。ところが、ポーランド戦後の西方での作戦、すなわち対仏戦ではその手は使えなかったわ。東の国境、すなわちポーランドの分割占領ラインは、当面の間は安心だったわ。たとえスターリンとヒトラーが、そのうち開戦するだろうとお互いに知っていてもね。というわけで、戦争の焦点は独仏国境に移ったわ。そこにはフランスが巨額の費用をかけて構築した対ドイツ大要塞線・マジノ線が存在したわ。戦艦並の構造に、火砲や機関銃がハリネズミのように配置された要塞線が独仏国境にでんと控えて、さすがのフランスも、対ポーランド戦が片付くころにはすっかり動員を完了させていたわ。さらにはイギリスの欧州派遣軍もこれに合流している。真正面からつっこめば、屍山血河の酸鼻を極めた煉獄が出現することは目に見えている・・・・。マコト君なら一体どうする?」
「ええっ。そそそそんなイキナリ!」
「さあ。さあ。さあ。レイノーはともかく、チャーチルやスターリンは待ってはくれないわよっ」
「えええええーと。ようするに、マジノ線っていうのは、壁みたいなものなんですよね・・・。でも、国境線なんて長いから、どっかに隙間があるだろうから、そこからコッソリ忍び込むとか・・・・。」
「・・・・・」
「・・・・・」
「あ~いや、すいません。昔のドラえもん見たいな発想(庭の壁の隙間から忍び出る)で・・・」
「・・・あたりよ」
「ええ?! マジ?! Σ( ̄□ ̄;;|||」
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