「だれがそれを欲しがっているの?」
「え、ええと・・・ビジネスの基本ていうと・・・物を売ること、ですか?」
「ふっ。甘いわっ。あの伝説の【すみれの砂糖漬】くらいに・・・」
「あーはいはい。その手のネタはいいから」
「・・・わたしが子供のころの話よ。その夏は、家族でホテルに泊まって、海水浴にいったりしたわ。そのとき思ったのよ。なんで、ホテルや海の家って立てられるんだろう? うちのお父さんなんか、アパート住まいで持ち家さえ無いのに、なんで、こんなホテルとか海の家が立てれて、そんなにお金持ちでないうちの一家でも利用できるのか?」
「・・・たとえば、昔話に出てくる王様やお殿様だったらお金を持っているから、自分用にホテルや海の家も建てられるわ。でも、なんで私たちみたいな、【普通の人】が使うような施設が建てられたのか? 確かに、使用料は払っているけれど、でも、それは後払いよ。家のお父さんがホテルを建てるときにお金を払わなかったのははっきりしているわ」
「じゃあ、借金をしてホテルが建てられた。とそこまで考えたとき、すべてが分かったわ」
「ええっ、なんか話がすこし飛んで・・・」
「ホテルを立てる人が借金が出来たのは、家のお父さんみたいな人がお金を払うのを知っていたから。いいえ、家のお父さんだけじゃなく、そこにホテルがあれば、たくさんの【普通の人】が利用してお金を払ってくれるわ。言ってみれば、みんなで共同利用するために、みんなが共同出資してお城を建てたようなものじゃないか、と思ったのよ。・・・・その瞬間、わたしは資本主義ってすばらしい、と確信したわ。資本主義っていう言葉は知らなかったけど、とにかく自由に商売できる体制に生まれたことは、人として幸運なことなのよっ」
「な、なるほど・・・??」
「いまいちわかっていないようね」
「つまり、商売の基本は、【人が必要としている物を提供すること】そして【人が必要としている物・サービスであれば、人からお金を借りてもはじめられる】ってことね」
「こうも言える。人間は、【欠落】を常に抱えている生物よ。そして欠落を異常な状態と見なし、欠落を充足させたいという欲求を抱えている。睡眠欲・食欲・性欲・世間体・見た目・美容・金銭欲・権力欲・出世欲・幸福への欲求・・・すべてが商売のネタになるわ。【欠落】と【欠落の充足】は重要なキーワードだから、覚えておきなさい」
「あーもう。この成功本オタクは、ややこしい物言いを・・・。つまり、美味しいものを食べたい・シロアリを駆除したい・不眠症を解消したい・偏差値を上げたい・綺麗に成りたい・・・・こういう悩みや欲求を解決してあげる商品やサービスが売れるってことよ」
「な、なるほど・・・」
「じゃあ、そのピンホールカメラは、誰が買ってくれるの? 誰の、どういった悩みや欲求を解決してあげるの?」
「えっ。え~と・・・・・」
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